生の芸術

ブリュッセルにあるArt et Marge美術館に行って来ました。

ここはアールブリュット(アウトサイダーアート)の小さな美術館で、なかなかいいコレクションが揃っています。

 

美術館のサイトはこちら。http://artetmarges.be/fr/index.html

 

ブリュット(フランス語)とは、美術界のメインストリームとはの文によって制作された芸作品の意味で、 ではアウトサイダトと言われています。元々は、フランスの画家ジャンデュビュッフェによって提案された言葉で、「生の芸術」という意味があります。 彼は、美術教育を受けていない精神病院の患者 受刑者などの社会的なアウトサイダーが自由に描いた作品を高く評価して、自らコレクションしていました。現在、その作品の多くは、スイスのローザンにあるブリュットセンターで見る事ができます。

 

Collection de LArt Brut Lausanne

https://www.artbrut.ch/ 

私が初めてブリュットの作品を見たのは、1993年に世田谷美術館で開催された「パラレル・ビジョン」という展示の中でした。精神病者の作品だけでなく、20世紀のマージナルな作家の作品や、シャーマンやアボリジニの芸術なども含まれていました。

作品のエネルギーに圧倒されたのを覚えています。

アネット・メサジェの作品を見たのはその時が初めてで、この出会いが後々パリに行こうと思うようになったきっかけのひとつになったかもしれません。

 

Annette Messagerの作品「Chimères 

 

今回のArt et Margeでの展会のタイトルは「Embrasez-vous(自分に火をつけろ)。美術館の10周年念のイベントです。

術館のコレクション作品に対応して、ベルギ在住のアティストが作家へのオマジュとして新たな作品を作り、オリジナルと一に展示する、というものでした。

のレアが作品を展示していて、私の相方ブルノも彼女の作品ケスを作ったということもあり、オプニングの日の夜8からの1時間を予しました。このはプレロックダウンで、美術館の入も制限されていたのです。

レアは去年のゴルデンウィクに、一知の田市での展示会に参加した仲です。

その時の珍道中は、また別の機会に書こうと思います。

今回の展示で、レアは大きなケーキを作りました。

これは、ベルギー人のGeorges Counasse (ジョルジュ・クナス)という人の作品に呼応したものです。

 

ジョルジュは、ベルギー南部の街リエージュのケーキ職人でしたが、小麦アレルギーになってしまい、仕事をする事が出来なくなりました。彼はお菓子を作る代わりに、色々なものを拾ってきては遊園地、メリーゴーランド、パン屋さんの模型を作るようになりました。

ノスタルジックで可愛い作品群は、見る人を魅了します。

晩年は貧しくて、大好きなメリーゴーランドに乗るお金もなかったそうなので、自分の手で再現したかったのでしょうね。 




 

レアは、最初、もっと大きなケーキを、私も含めた友達四人で作り、それをお神輿に乗せて練り歩いてはどうか、と提案していました。

そして、会場に来ている観客が通りすがりに食べられたら面白いなどと話していました。そのためにミーティングまでしたのですが、予算が少なくて断念。結局、レアひとりで作ることになりました。

 

 


 

 

中にいろんな物が入っているそうで、会期中、少しずつ切って中を見せるはずだったのです。

ところが、オープニングが始まってから1週間後、本当の再ロックダウンに突入してしまいました。美術館も閉鎖。始まったばかりの展示もお預け。なんということでしょう。

せっかくなので、オープニングで撮った写真を紹介しておきます。

 

 

レアはマルセイユから来たフランス人で、もともとブルノーの向かいのアトリエにいたアーティストです。

日本で「お寺でアート」というイベントがあるけど、参加する?と聞いたら、速攻のひとつ返事で、本当に日本に来てしまいました。

イベント中は、ずっと同じホストさんの家で寝泊まりしていました。

初めて一緒に旅行した割にはなんの問題もなく、案外と気が合っていたんですね。

もしかしたら気を使ってくれたのかもしれませんが。

すごく楽しい旅行になりました。

イベントの後、レアは一人で大阪に泊まることにしました。

なんと、大阪で1週間1万円のホテルを見つけたそうなのです。

私が東京に帰る前の一日を一緒に過ごしまた。

彼女が、ホテルの近くにすごく面白いところがあると言って連れて行ってくれたところが、釜ヶ崎にあるココルームでした。

この場所を取材したテレビのルポをネットで見たばかりだったので、偶然、実際の場所に来てしまったことに驚きました。

ココルームはゲストハウスにもなっていますが、日雇いの仕事をしている人たちを集めて詩を書いたり、絵を描いたりしています。

入り口に、手書きで「釜ヶ崎芸術大学」と書いてありました。

私たちが行った時は、泊まりの人たちの夕ご飯が始まるところで、私とレアは庭でビールを飲みました。庭の真ん中に掘りかけの井戸が見えていました。

井戸を掘るワークショプをやっている途中だったのです。

 https://www.youtube.com/watch?v=CU-xJ1YnsfE

三日月の綺麗ないい夕方でした。

 

 

ココルームは2007年に、「こころのたねとして」というイベントを行なったそうです。

ドラマリーディングという形で、釜ヶ崎に長く住んでいる人たちの聞き取りをして、それを再構成して朗読するという試みです。

聞き取られた人の人生が、記憶が共有され、伝達され、タネとして、誰かに向かって投げられるのです。 (ココルーム文庫の「こころのたねとして」から)。

すごく興味深い活動です。

 

ココルームhttps://www.cinra.net/interview/201408-yokotori-kamagasaki



展示されたブリュットの作品も、私にいつも元気をくれますが、それは美術品として分類され管理されている過去の作品です。

ココルームの取り組みは、今、ここで作り出された生のクリエーションであり、生のコミュニケーションであると感じました。

これが本当のアブリュット(生の芸術)なのかも。なんだかワクワクしてきます。

連れてきてくれてありがとう、レア。

彼女はこの後、1週間、釜ヶ崎に入り浸っていたようです。

京都にも行こうかなあ、と言っていたのに。磁石のように惹きつけられてしまったのかな。 

レア自身もアブリュットな人だから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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