猫はいつも隣の家からやってくる

今の私たちの生活は、コロナ中心に動いているように見えます。ロックダウン解除となったベルギーでも、公共交通機関でのマスク着用が義務になっていますが、すべての店内でも必ず着用ということになりました。
死者はゼロになったとはいえ、感染者の増加は予断を許しません。
私のパートナーであるブルノーも、最初マスクをするのを嫌がっていましたが、今では慣れてきたと言っています。人間とはそういうものなのかもしれません。 
慣れることで、いろんなことが少し先に進むことができます。(後退することもありえますが)

うちの右隣に住んでいる女性は最近調子が良くないようです。
しょっちゅう怒鳴り声が聞こえます。離婚した旦那さんと電話で喧嘩していると思っていましたが、先日、うちの離れの窓から、彼女がテラスで怒鳴っているのを見えました。
一人で見えない相手を罵倒しているようでした。
彼女の家族の崩壊の話は、ずっと前にも書きました。
リンクはこちら。
 
https://sachiyohonda.blogspot.com/2015/09/blog-post.html 

彼女は、今でも、一人で隣の家の一階に住んでいます。
手入れしていない庭は、今や森に戻りつつあります。
彼女が失踪した時に預かった子猫のピプンは、私の友達にもらわれました。
女の子でした。今は毛の長い美人猫になっています。もう私のことは微塵も覚えていないようで、近寄ると逃げます。人見知りな猫に育ちました。
ポリスの捕獲から逃れたピプンの兄ちゃん猫は、その後もたまにうちの庭に来ていましたが、ある時からパッタリと姿を見かけなくなりました。
隣人がマルセイユから帰ってきたずいぶん後になって、ばったり道で会った時に、「あの猫はどうしたの?」と聞いたのですが、心臓が悪くて死んだと言っていました。持病だったそうです。
大きくてたくましい猫だったので、本当に心臓病?と、にわかには信じられませんでした。
道で会うときは、隣人はいつもニコニコしていて、とても優しい感じの人ですが、怒鳴っている時は、かすれた声の悪魔のようです。
一人の人間の中で、人格が二つ引き裂かれてるように感じられます。
叫んでいるときは、よく「出て行け、出て行け」という声が聞こえてきます。
彼女に見えている「誰か」は邪悪な存在のようです。

さてさて、去年から、うちには猫のルルンがいます。


この子も、もともと隣人の猫でした。
去年の話ですが、隣人にルシーと呼ばれている猫が、塀の上でよく啼いていました。
その塀は微妙に高いので、ルシーは怖がりなのか、降りてくる気配はありません。
でも、こちらにすごくアピールしています。私の顔を見ながら大声でニャーニャー啼きながら、塀の上をいったりきたりしています。
ある日、ルシーにそっくりな猫がうちの庭にいました。そしてコンポストに捨ててあった鳥の骨をくわえて木を駆け上っていくのを見ました。その時に、双子のようにそっくりな猫が2匹いることがわかりました。ルシーの方は首輪をしています。
ルシーのそっくりさんは、毎日庭に来てキャットフードを食べて帰っていきました。
そして、そのうち帰らなくなりました。 
夕方ごろ、隣人は、よく猫の名前を呼んでいます。 うちに居付いた猫はアマダスという名前のようです。
「アマダス、アマダス」と、いくら呼ばれても知らんぷりしているので、「君は帰らなくていいのか?」と聞いたりしましたが、もう、うちにずっといる、と心に決めたようです。
なんとなくルルンと呼ぶようになり、私が呼ぶと、「にゃっ」と答えるようになりました。
うちの猫になるなら、やっぱり元の飼い主には話しておかなければなりません。
お隣の呼び鈴を鳴らしました。

隣人が言うには、双子の猫たちは、彼女の甥っ子のうちから来たということでした。
甥っ子の家は庭がないアパートだったので、引き取ったのだとか。
その時、彼女のうちには犬連れの友達が泊まっていて、ルルンは犬が嫌いだったようです。「ルシーは全然平気なのよ。猫もそれぞれ違うわよね。まあ猫が飼い主を選んでもいいんじゃない。」
ということで、晴れてルルンはうちの猫になったのです。
前の猫が死んで、もう動物を飼うつもりは全くなかったんですが、向こうから来てしまったからには仕方ありません。
一緒に暮らしてわかったのは、ルルンの気立ての良さは天下一品で、小さな子供が遊びに来た時でも、ちゃんと相手をしてあげるほどです。
庭に出て、水をやった庭木の雫を舐めたり、何かを眺めたりしています。
いつも何かを見ている猫なのです。
不思議なことに、ルルンがうちの庭をテリトリーにすると、ルシーは全く現れなくなりました。たまに塀の上を通りかかると、ルルンに向かって、「シー」と威嚇しています。猫姉妹の絆ってそんなものなのね。
ルルンは、うちに来てから少し太りました。前はガリガリだったので。
ルシーは未だにすごく痩せています。隣人がちゃんとご飯をあげてるかどうか、ちょっと心配です。

そして、お隣の庭は相変わらずボサボサです。
最近、風の強い日が多くなりました。
隣の庭の角にあるモミの木が、心なしか傾いています。
最近、調子の悪そうな隣人も傾いたままのようです。
大木なので、もし倒れたらうちの庭に激突するでしょう。
何か、大したことが起こらなければいいけれど。 
猫以外の。 













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