スリランカ回想 ビーチへ


週間一人で過ごすとしたら静かなビーチがいいなと思い、電車で南に向かうことにしました。
コロンボから南に行く鉄道は、ずっと西海岸沿いを走っていますから、海を見ながら優雅にビーチまでのんびり行こう、などと想像を膨らませ、市バスに乗ってコロンボのFort駅に向かいました。

スリランカには、20代の頃に一度来たことがあります。初めて乗った市バスは、床に穴がいていて、下に道路が見えている上、剥き出た電気線をばちばちやりながら クラクションを鳴らしてたことを覚えています。あれから何十年???きっと近代的になっただろうと想像するも、市バスに関しては大差ありませんでした。
バスにドアは付いていません。車掌さんが乗り降りしながらお客を集めていきます。
コロンボ市内に行くバスに乗り込めたのはいいですが、ぎゅうぎゅう詰めで、値段もわからず、隣に座ったおじさんが、このぐらいという値段を教えてくれました。
マーケットの真ん中で降りて、駅まで歩いて行きました。暑さと人混みで疲労困憊していましたが、これも東南アジアの国の醍醐味です。フラフラながらもワクワクしてきました。

Fort駅ではMerissaまでのチケットを購入。
私の電車はどのホームから出るのか、何回もオフィスに聞きに行きました。
ホームには、植民地時代の名残りなのか、外国人用トイレというのがありました。



プラットホームには、南に行こうとする観光客がちらほら。
君のチケットは1等車?それとも2等車?とアメリカ人カップルに聞かれて、はてな?
切符にも何も書いてないので、またオフィスへ。結局、私の切符は二等車でした。
プラットホームでは、くる電車、くる電車、すべてぎゅうぎゅうで、みんな窓から荷物を投げ入れて席取りをしています。
本当に乗れるのだろうか。アメリカ人と相談して、なるべく入り口の近くに陣取り、素早く乗り込むために身構えていました。
ところが、すでにたくさん人が乗っている電車が到着し、待ってる人がぎゅうぎゅうと押し合いへし合いで入っていきます。私は咄嗟に後ろから無理やりリュックを押し込んで、奥へ奥へと進んで行きました。何といっても、東京の満員電車で鍛えられていますからね。
アメリカ人カップルは、そこから乗るのを諦め、別のドアに、すごい勢いで走って行きました。せっかく、長旅の話し相手ができたと思っていたのに残念でした。
この混みようで3時間。きっと途中で降りる人がいるに違いないと希望を持ちつつ、足を踏ん張りました。なにしろ、電車の揺れがすごい。その上、電車のドアがないので、外にぶら下がっている人もいるほどです。
そんな、混んだ車内を、水や果物を売りに来る人がいます。頭に洗面器を乗っけて、人の間をグリグリと押しのけて進んできます。誰も文句を言わず通してあげていますから、ちゃんと買う人もいるんでしょうね。

 電車が 走り始めてすぐ、右側に海岸が見えてきました。
海風が入ってきてホッとしましたが、電車内の混雑が変わるわけでもなく、近くに立っているおばさんが具合が悪くなり、窓からゲーゲー吐くという出来事もありました。
小さな男の子が大学生らしき青年たちと楽しそうに喋っていたり、お母さんが、子供達にスナックやお菓子を出してあげたり、窓際に座ったハンサムな青年の横顔をしみじみとを眺めたりしながら気を紛らわしていましたが、座れたのは、乗ってから2時間も過ぎた頃でした。
平日の2時ごろの電車なのに、なんでこんな遠くまで行く人がいっぱいいるんだろう。
スリランカ人のライフスタイルは、未だに知る由も無りません。
やっと座れて一息ついて、Google mapで、自分の行くべきところを確かめました。
Merissaの三つ前のWeligamaの駅で降りるのが一番予約したホテルに近そうです。
ところがです、何とWeligamaの駅で降りれませんでした。
駅の名前が書いた看板は、遥か彼方。スマートフォンでチェックしていたにもかかわらず、「ここどこですか?」と周りの人に聞いた時にはすでに遅く、電車はゆっくりとホームを出て行くところでした。
仕方なく次の駅で降りて折り返すことにしました。
降りるときには、私の乗っていた車両にはプラットホームが届いていないため、リュックを放り投げて、砂利が敷いてある線路に飛び降りました。
頭から火花が出そうでした。
誰も待つ人がいない小さな駅。 私の切符はMerissaまでですから、一駅折り返すのに切符を買い直す必要はないと信じ込み、切符を買えと言っている駅長さんと熱くディスカッションしました。
でも、切符は一枚で一回分なんだよ、と静かに諭されて、あ、そうですか、と新しい切符を買い直しました。おばさんになると、なんでも文句を言うようになってしまいますね。
やれやれ。
さらに、足を下ろしていると蚊に刺されるので、ベンチに足を上げていたら、用務員さんに怒られました。はしたなくてごめんなさい。

30分待って、電車がやってきました。
あんなに古い電車は、今まで見たことがありません。
昔、London からBrightonまで行く電車のクラシック感に驚いたことがありますが、スリランカの電車もイギリスが当時持ってきたものをそのまま使っているのでは、というような風貌です。それでも、それでも、来てくれただけでありがたい。


Weligamaに着いた時には、すでに日が落ちて暗くなっていました。
予約したホテルはビーチの真ん前。個室が空いていなかったので、ドミトリーになりました。もう、荷物を持ってウロウロしたくなかったので、4日間予約を延長し、その日の夜は泥のように眠りました。
優雅な車窓の旅というのは、ただの夢だったというのがわかった1日でした。
 











コメント